がん保険 相談をこんなふうに利用しよう!

一八七九年にわが国で最初の損害保険会社である東京海上保険会社が創業されて以来、わが国の損害保険は長い歴史を有しています。
その間、損害保険は時代の変化とともに発展し、国民生活や経済活動のすみずみにまで普及しました。
社会の発展は、私たちの生活を豊かにする反面、私たちを取り巻くリスクをますます巨大化・多様化・複雑化させています。
企業や個人がこのようなリスクから経済活動や生活を守るために、損害保険は今や欠かせないものになっています。
金融ビッグバンによって、損害保険は自由化・規制緩和のフロントランナーになり、歴史的に見ても最大の転換期を迎えているといっても過言ではありません。
これまで規制産業であった損害保険事業は新たな競争の時代を迎え、損害保険市場は今後とも大きく変貌していくことが予想されます。
本書は、損害保険に関心を持っている方々を対象に、損害保険の基本的な仕組みや知識について極力平易に説明するとともに、金融ビッグバンによって何が変わったか、何が変わろうとしているのか、という点についても理解していただけるように、という意図を持って執筆しました。
より多くの皆さんが損害保険に対する理解を深めていただくとともに、自由化・規制緩和が消費者や損害保険市場にどのような影響を与えるかについて、何らかの示唆を提供することができれば筆者にとって望外の喜びです。
私たちの経済生活は、個人・企業を問わず数々の不確実性の下にあり、常に、思いがけない事故や災害などにより経済的損失を被る可能性にさらされています。
このような、損失を発生させる不確実性を「リスク」といいます。
我々を取り巻くリスクはまさに多種多様でありますが、その内の一部として、例えば次のようなものが考えられます。
病気やけがにより、死亡する、働けなくなる、あるいは治療費がかかるリスク 自動車事故によって、他人を死傷させたり、他人の財物を損傷し、損害賠償責任を負うリスク 火災・地震・洪水・風災で、住んでいる住宅や家財が、損壊、焼失、流失などにより滅失するリスク 高齢になって、寝たきりになり、介護費用がかかるリスク 工場や営業設備が火災・地震・洪水・風災で滅失し、再建築費や修繕費がかかるリスク 上記の理由によって、事故がなければ得られたはずの利益が喪失するリスク 船舶が海難事故に遭い、船舶や輸送中の製品や原材料が滅失・損傷するリスク 施設の設置や管理上の不備などによって、あるいは製造・販売した商品の欠陥のために、第三者に対して損害賠償責任を負うリスク 従業員が作業中に負傷して、労災上の補償をしなければならないリスク 文明・社会の発展、技術の進歩は、我々を取り巻くリスクをますます巨大化、多様化、複雑化させています。
また、最近では、権利意識の高揚と自己責任原則の浸透によって、損害賠償制度を利用しようという動きが顕著になっています。
我々は、いつ第三者に損害を与え、賠償責任を負うかわからない時代になってきています。
製造物責任や、環境汚染といった問題もありますし、情報通信技術の発達や金融技術の進歩もあり、万一不測の事態が発生した時に、どれほどの損害があるかすら測り知れません。
リスクは、純粋リスクと投機的リスクに分類できます。
純粋リスクとは、火災、交通事故、あるいは死亡といった事実のように、損失のみを発生させるものです。
一方、投機的リスクとは、株式投資などのように、損失を発生させると共に、利益をもたらす可能性のあるものをいいます。
企業経営そのものも、投機的リスクであるということができます。
これらのリスクは、いずれも金銭的もしくは経済的なリスクですが、精神的・感情的な損害を被るリスクもあります。
家庭不和、子供の非行など様々なケースが考えられます。
もちろん、このような事象が生じると精神的ダメージも生じますが、精神的・感情的な損害は金銭的・経済的な補償では償い得ないものですから、保険の対象としては不適格です。
日本を初め資本主義諸国は、私有財産制度を基礎にした経済体制がとられており、各々の経済主体は自己責任原則において行動することが求められております。
リスクに対する対応も、一部公的な救済措置が期待できるケースはあるものの、基本的には自己責任(自助努力)において処理しなければなりません。
リスクに対する対処の仕方としては、次の四つが考えられます。
リスクが実現しないように、リスクが生じる可能性のある行動そのものを避けることをいいます。
しかし、回避するばかりでは、積極的な生活や企業活動はできませんし、多種多様なリスクが身の回りにある今日では、リスクの完全な回避は極めて困難です。
リスクを積極的に予防し、その発生頻度を減少させるよう努力すること、また、万が一リスクが実現した場合に、その損害を最小限に食い止めるように軽減することです。
リスクを自ら抱え込むことをいいます。
これには、自らがそのリスクの存在に気付かず何ら対応手段を講じないケースと、リスクを認識しながら、手段がない等の理由で対応できないケース、あるいは見込まれる損失が小さいなどの理由で故意に対応しないケース等が考えられます。
リスクの保有の方法としては、単に保有する(何の手段も講じず、損害が発生したら自己資金でまかなう)、貯蓄などのようにあらかじめ資金を積み立てておく、自家保険、キャプティブ(三三ページ参照)といった方法があります。
リスクを第三者に負担してもらう方法です。
我々が実際に、リスクの回避、リスクの除去・軽減、あるいはリスクの保有ができれば、問題は少ないのですが、今日の巨大化、多様化、複雑化する現在のリスクへの対処方法としては、現実的な方法ではありません。
保険は、これらの対処方法のうち、リスクの転嫁方法の代表的なものといえます。
損害保険とは何かという絶対的な定義があるわけではありませんが、例えば以下のように表現できるでしょう。
すなわち、損害保険とは、「同種のリスクを負担している加入者が統計学的な基礎によって算出された一定の拠出(保険料)を行うことによって、偶然な事故による損失に対しその程度に応じてお金(保険金)を受け取ることができるという経済制度」といえるでしょう。
しばしば「小さな負担で大きな安心」という保険会社のコピーを見かけます。
保険契約者から見れば、少額の保険料で高額の補償が得られるのです。
では、なぜこのような制度が可能になるか考えてみましょう。
保険は「大数の法則」の上に成り立っているといわれています。
個々の人が今日これから、あるいは明日、火災に遭ったり交通事故を起こしたりするかどうかは全く偶然で予見できません。
しかし、個々人にとって偶然であるこうした事故も、極めて大きな集団でデータを集めると、一定期間中に事故が発生する確率を(例えば一万分の一というように)一つの数字としてとらえることができます。
大数の法則を説明する際に、しばしばサイコロの話が出ます。
サイコロを例えば十回振って一の目が出る回数には相当バラツキがありますが、百回、千回と反復していくと、その確率は限りなく六分の一に近付いていきます。
すなわち、保険の対象になるのは個々人にとって偶然な事故であっても、集団全体で見れば一定の確率で生じることが予見できることが、保険が制度として成立する必要条件になります。

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